ゴットフリート・ワグナーII [オペラ]

tristan4-d9e9e.jpgトリスタンとイゾルデ イメージ

リヒャルト・ワグナーのひ孫にあたる、ゴットフリート・ワグナーについては、以前、このブログで取り上げました。毎年、8月は、日本では、広島・長崎の原爆の日や、15日の終戦記念日もあり、第2次世界大戦のことを思い起こす月でもあります。日本と同じ、敗戦国ドイツ生まれ(1947年)のゴットフリート・ワグナーには、同じ年代と言うこと、音楽の巨匠・ワグナーのひ孫と言うこともあり、とても、興味深く、ある意味、親近感も持っています。

R.ワグナーの作品だけを上演する「バイロイト音楽祭」は、現在も世界中のワグネリアンの聖地として多くの信者?が毎年巡礼?し続けています。[I]でも申し上げたように、R.ワグナーの総ての作品

はそれこそ「世界遺産」でもあるわけです。たとえば、「トリスタンとイゾルデ」の音楽に、身を委ねた時の恍惚感は、イタリアオペラの音体感とは、全く異なるものです。人間の奥深いところにある、精神と肉体とが、入り混じった「官能」を、音楽が、表現しています。R.ワグナーの才能に感謝です。

しかし、一方、R.ワグナーが「反ユダヤ主義」であったことに端を発し、ヒットラーとナチスドイツが

彼等の「反ユダヤ主義」のプロパガンダとして、R.ワグナーの作品を利用した事実。また「バイロイト音楽祭」を仕切る、その後のワグナー一族の、「ホロコースト」等への反省のかけらも無い、戦後の

振る舞いを知る人は少ないと思います。


ワグナー家の一員である、ゴットフリート・ワグナーは、使命として、この贖罪に取り組みました。注目すべき活動として、彼は、「イスラエルにおけるワグナーと言うケース」と題して、ユダヤ人の国イスラエルで講演をしました。この講演で、ゴットフリートは、父ヴォルフガング、伯父ヴィーラントがイニシアティブを取る、「バイロイト音楽祭」についても、批判しました。

当然なところ、両親を初め、一族からは、猛反発を受けます。ゴットフリートは、青年期からオペラや、自身の博士論文でもある、「ブレヒト&クルト・ワイル」の舞台演出を手掛けるほど、舞台芸術の才能に溢れた人にも関わらず、現在もなお、「バイロイト音楽祭」への参加(観客としてさえ)は禁止されています。

ゴットフリートは、自身のルーツから、常に、自身のアイデンティティー(居場所・立ち位置?)について自問しています。自分の家族が、ヒットラーと組んで、ホロコースト等で行った、ユダヤ人大量虐殺に、間接的にせよ、関与した事実はあるわけです。終戦後も、「ワグナーの芸術」を「錦の御旗」に掲げ自身の両親はじめ、公的には、一言の反省も無しに、「バイロイト音楽祭」が続けられていることに

一族として、我慢がならないのです。このことについて、一石を投じる責任があるのは、一族である、

自分の使命だと、彼は考えています。

私自身、ヨーロッパに留学(音楽で)していた経験から、欧米人にとっての「ユダヤ人」の存在は、大変微妙な問題なのだ!との強い印象を持ちました(ある種、アンタッチャブルな事?)。私のまわりの、西欧人の何人かは「彼等は、私たちとは、別な人々だから」「彼等は、彼等自身が、他の人々とは違う人間と言う強い意識がある」との言葉を何度も聞きました。

白色系欧米人から見るユダヤ人への特別な思いは、シエクスピアの戯曲「ベニスの商人」に描かれている、人物像と、現在も何も変わっていない気がします。

それにしても、自身の「アイデンディティー」も揺るがしかねない、ゴットフリート・ワグナーの行動力に

私は大いなる敬意を表します。Kiki


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