イタリアの人間国宝 レオ・ヌッチ [オペラ]
左レオ・ヌッチ(2016年ミラノスカラ座)
イタリアのバリトン歌手、レオ・ヌッチは1942年生まれで、今年77歳になる、現役のオペラ歌手です。
彼を生で初めて聴いたのは、1981年,ミラノスカラ座の初の日本公演の、「セヴィリアの理髪師」のフィガロ役でした。この公演は、指揮クラウディオ・アバド、フィガロ レオ・ヌッチ、 アルマヴィーヴァ伯爵 フランシスコ・アライサ、ロジーナ ルチア ヴァレンティーニ・テラーニ、バジリオ フルッチョ・フルラネット 他、最高のメンバーで、私が、何度か生で、あるいは、録音等で聞いたセヴィリアの中の最高でした。なんと言っても、マエストロ アバドの究極のテンポ感と、音楽の色彩の豊かさ、歌手たちを最高の演奏に導く、愛情溢れるリーダーシップは格別でした。 その時ヌッチは、39歳でした。
セヴィラのフィガロに続いて、彼の得意とするオペラは「リゴレット」です。3年前、すでに、74歳になっていたヌッチが、ヴィットリオ・グリゴーロのマントヴァ公爵で、スカラでのリゴレットも聞くことができました。本当に素晴らしいリゴレットでした。
そして、今年9月現在、スカラ座付属のオペラアカデミーの生徒たちによる、「リゴレット」がスカラ座で
9回上演されています。なんと、リゴレット役は、9回全回、ヌッチが歌います。指揮は、ダニエル・オ
ーエンです。マントヴァ公爵・ジルダ・マッダレーナ・その他 の配役は、全員、アカデミアの生徒たちです。
日本では、「人間国宝」と呼ばれる、画家、彫刻家、陶芸家、歌舞伎俳優、邦楽演奏家、能楽その他
様々な芸術・工芸部門に携わる優れた人々に与えられる称号があります。「人間国宝」に選ばれた
方々は、勿論それぞれの分野での技量が優れていなければなりませんが、加えて、「後継者の育成」も重要な基準と聞いています。
バリトン レオ・ヌッチは、日本式に言えば、イタリアオペラ界の「人間国宝」ではないでしょうか?
その彼が、77歳でも現役でも歌い、それだけでも、称号に値するのに、今回のアカデミアの生徒たち
を、自らが舞台に立つことで、「国劇」イタリアオペラの真髄を後輩たちに伝えようとしている情熱に
感激しています。
叶うことなら、ミラノに飛んでいき、ヌッチとアカデミアの生徒たちの「リゴレット」見たいです!
Buravo! Maestro Leo・Nucci
Kiki